【冬のカタログについてお詫びと訂正】
今年度発行いたしました冬のカタログに記載の郵便振替番号に誤りがございました。
ここに訂正し、ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。
●郵便振替 郵便振替口座
誤)00790-0-4092 正)00790-0-40925
土地に根ざし、風土を生かす「永平寺テロワール」
~米と生きる郷酒蔵~
山から吹く風、川を渡る風を受け、あぜ道に立つと、その土地が生み出した人間そのものの色合いと息づかいが聞こえてきそうです。そして、そこで感じるのは、目の前に広がる大自然への畏敬の念と感謝。
そして、これら土地に根差し、風土を生かした酒造りの源が永平寺テロワールです。
米作りと生きてきた小さな郷酒蔵だからこそ
私たちは、210年以上も昔の文化三年(1806年)からこの永平寺の地に酒蔵を構え、霊峰白山の雪解けの伏流水とその水で育まれた米で、永平寺の郷酒「白龍」を醸し続けております。
5代目、吉田忠智が酒蔵を継いだ時、白龍は福井県内で一番製造石数が少ない小さな小さな酒蔵でした。東京農業大学、国税局・醸造試験場で酒造りを学んだ6代目蔵元・吉田智彦は、そこでとても悔しい思いをしました。田舎の小さな酒蔵でしたので、昔ながらの1級酒、2級酒しか製造していなかったためです。
そこで、質の高いお酒でお客様に喜んでいただこう!と考え、その原材料となる米「山田錦」を購入しようとしたが、「前年度実績がないので米を売れないと」断られ、どうしたら良かわからずに混沌とした日々を過ごしていました。
その様な折、精米をお願いしているパールライス工場のベテラン精米杜氏の横井氏から「吉田さんのとこ田舎で田圃がぎょうさん(たくさん)あるんやで、自分で山田錦を作ったらどうやの。」との衝撃的な一言をいただき、一筋の光が見えた瞬間でした。
「安心してお酒を飲んでもらうために、恵まれた上志比村の大自然の中で、化学肥料は使わない。農薬も、できるだけ使わないで、米にこだわり酒米最高峰の山田錦を自ら作り、その米で米の命が生きている旨い酒を造る。」と、決心したのは平成元年でした。
当時、山田錦栽培の北限はぎりぎり福井県となっており、県内で山田錦の栽培に着手はしても反あたりの俵数がとれず、どこも山田錦の栽培が続く事はありませんでした。酒造りについては、学んだものの、米作りについては素人でしたので、現実はそんなに甘くなかったということです。
山田錦は、晩生で背丈が高く台風に弱い。米粒が大きく、米粒中央に大きな心白があることが山田錦の特徴だが、コシヒカリの様に収量があると、米粒が小さくなり高精白する酒造りには向かない。今まで、化学肥料を米作りに使用していたので、土壌改良に3年かかると言われました。
米の命が生きている。
酒は、生きている。
造り手の心意気がそのまま酒に表れる
米作りに挑んだ1年目。
1反あたり3俵しか採れませんでした。
それでも、自分が苦労して愛情をもって作った米。その山田錦で造る酒造りは意気込みがこれまでとは大きく異なりました。
まず、米の旨みが一番現れると考えた50%、60%精米の純米酒を製造。
搾る時を想うと緊張や苦労の中にも楽しみがあった。
晩秋には完全熟成堆肥を稲株と一緒にすき込み、
春には田植え。
夏には田の管理。
秋には稲刈り。
冬には酒造り。
土から数えると、一年半の時を超えて初めてできた酒です。
杜氏、蔵人とともに祝杯を挙げました。
喜びは大きかったのですが、心から満足のいく酒質ではなかったのも事実。
米品質が大事な事を思い知らされた。「酒造りは、土作りから。」
完全熟成堆肥で蘇った土の神様
6月の田植え直後の寒波、9月、台風の強風による稲の倒伏。毎年自然環境は違い、その都度肌で米作りを学んできました。
杜氏は、「酒造りは毎年が一年生だ。」と言います。しかし、一年の間に何本もの酒を造ることができます。田んぼも然り。毎年が一年生です。しかし田んぼは、一年の間に1度しか稲作ができない。
完全熟成堆肥といっても、鶏糞、酒粕、もみ殻、米糠、と様々な試行錯誤を行いました。その結果牛糞にたどり着き、土壌改良から3年目の春。周りのどこの田んぼより先に雪が解け、黒々とした土が顔を出しました。
トラクターで田圃を起こすと、おびただしい数のミミズや虫たちが顔を出し、シラサギなどの野鳥が耕す後からついてきました。
土の神様が田圃に戻ってきたのだ。
その年の秋、1反あたり7俵の山田錦が収穫されました。
完全熟成堆肥の有機肥料をやることで、地力がついた田圃では、安定した高品質の山田錦を自社栽培することに成功しました。
山田錦の栽培の成功は、福井県では初めてのことでした。山田錦の栽培を始めて四半世紀以上経ち、山田錦が安定してとれることがわかった今では、白龍の想いに共感してくれる蔵人の所で、山田錦と五百万石を6代目蔵元の友人の農家で、山田錦をそれぞれ契約栽培しています。
酒の仕込み水や田圃の水は、白山麓の雪解け水。
万年雪を湛えた霊峰白山から流れる雪解け水は、長い年月をかけ、土壌のミネラルをたっぷりと吸収しながら自然に濾過された柔らかで清冽な伏流水です。敷地内の井戸から汲み上げて仕込み水として使っています。同じ水系の水で山田錦、五百万石を育てています。
酒は人なり。
永平寺町の風土で育った杜氏に蔵人たち。地元永平寺町民だからこそ、その地形、土壌、水、気候を知りつくしています。自然の力を借りて醸す日本酒は、造り手の技術がダイレクトに反映されます。
根気強くまじめであるというこの風土から生まれた人柄と、「美味しい!」と、喜んでいただきたいという醸造家としての情熱から生まれる頑な手間暇のかけ方こそが、白龍こだわりの味わい「濃醇できれいな酒・明日への力水」となります。
永平寺テロワールとは、滋味豊かな大地と良質な水に恵まれた永平寺の郷に感謝し、この美しい田園風景を守り、この郷ならではの美酒を醸すことを追及する終わりのない旅、そのものではないかと思います。
そして、その味わいの先に、私たちの誇りである美しい郷を想って頂き、いつか訪れていただく事が私たちの切なる願いです。